諌山創『進撃の巨人』12 ⑨

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さてさて前回の続き。ヒストリアとユミルが果敢にも巨人たちに立ち向かいますが、状況は圧倒的に巨人の群の優勢。ライナーたちもそうですが、調査兵団は撤退どころではありません。エルヴィン団長も馬から振り落とされており、それを守ろうとする兵士たちも巨人にくわれていく。

 

ライナーが調査兵団の撤退を妨げようと投げた巨人が、ジャンめがけてふってきたり、エレンを守ろうとしてカルライーターの巨人に立ち向かったハンネスさんが、エレンとミカサの眼の前で食いちぎられたり。

 

まさに地獄絵図。

 

そんな地獄絵図のなか、再び大切な人が食われていくのを何も出来ずに見守ることしかできないエレンが狂ったように笑います。

 

「母さん…オレは何も…なんっにもできないままだったよ!」と叫ぶエレンはまだようやく指が再生してきている状況。ミカサはケガで動けず、エレンは消耗の為、巨人化できない。

 

周囲には多数の巨人。ジャンは気を失い、アルミンがそれをかばうも巨人は迫りきている。エルヴィンの周囲の兵士も悉く食われ、彼も捕食される寸前。多くの兵士が食われていく地獄の中、ハンネスさんを食った巨人がさらなる獲物であるミカサとエレンに視線を遣る。

 

そんな地獄絵図のなか、絶望するエレンに、ミカサはエレンに「伝えたいことがある」と笑いかけます。

 

「私と…一緒にいてくれてありがとう。私に…生き方を教えてくれてありがとう」照れたように笑い、泣きながらミカサがエレンにありったけの気持ちを伝えようとします。

 

「私にマフラーを巻いてくれてありがとう…」

 

その笑顔を見て、絶望に涙していたエレンが立ち上り、「そんなもん、何度でも巻いてやる」と歯を食いしばります。

 

いつもミカサに守られていたエレンが彼女を守ろうと立ち上がり、いつもエレンの心配だけして強くあろうとしていたミカサがまるで年相応の少女のようにその気持ちを伝えたこの場面は進撃一のあたたかい場面だと思う!

 

エレンに手を伸ばす母とハンネスさんを殺した巨人。それに丸腰で拳をふりあげたエレンの手が、巨人の手と触れた瞬間。「ペチン」という音がした瞬間、一気に周囲の巨人がその巨人めがけて捕食していきます。

 

そのすきに逃げようとするエレンやコニー達。

 

困惑する兵士たちのあいだで、巨人組のユミルとライナーだけが、その情景にそれぞれ思う所がある様子。ユミルはライナーたちがエレンを捕えようとする理由を確信し、ライナーは「座標」がエレンの手に渡ってしまったとして、大きな危機感を覚えます。

 

エレンに向うライナーに対して、「来るんじゃねえ」とエレンが叫んだ瞬間に、他の巨人たちはライナーに向っていきます。

 

まさにエレンの意志通りに周囲の巨人が動くなか、エルヴィンの指示で生き残っている兵士たちは撤退します。

 

皆が馬で撤退するなか、ヒストリアとコニーがユミルに声をかけますが、彼女は巨人の姿のまま、ヒストリアに「ゴエンア」とだけ言い残して、巨人に襲われるライナーを助けに向ってしまいます。

 

そのまま、調査兵団は撤退。ユミルはライナーたちを助け、シガンシナ区まで三人で逃げ延びます。

 

故郷へ帰るライナーとベルトルトのために、土産として同行するために。自分の命が奪われることを承知の上で。ライナーとベルトルトの境遇と心境を慮り、声をかけるユミル。物言いは悪いけれども、それはまさに女神のような行ない。

 

「女神様もそんなに悪い気分じゃないね」

 

と笑うユミルの表情で今回のお話は終わり。

 

最新話まで読了した後、この三人の境遇を考えると本当に心がぐっと痛くなる場面です。ユミルはやっぱり女神様だと思う。本当に。この子はユミルとして生をうけてから、第二の人生のユミルで死ぬまで、ずっと誰かのために生きてきて、それを最後の最後に「自分のため」として生きぬくことができたのだと思う。それはヒストリアとの出会いのおかげで。

 

でも、それでもきっと、彼女の生き方を「美しい」ままに受け止めてはならない気もする。彼女が言うように、「どうにもならなかった」彼女の生は本当に辛すぎるから。

 

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