漆原友紀『蟲師』9 ⑦

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スグロのもとで過ごし始めて数日。山に変化が起きます。ヌシが死んだようだということが里の人たちに知らされます。ギンコもヌシの視線を感じなくなります。ヌシが死んだことは自分が山にいるからなのではないか、と心配するギンコの心中を察し、「お前のせいじゃない」と諭すスグロ。老成していたヌシが死ぬのは時間の問題だったのだと言います。

 

様子を見るためにギンコを残して山に入るスグロでしたが、ギンコも山に一人で入ってしまいます。

 

そして、山で次のヌシの卵(鳥の卵)を見つけます。その山に生きる者すべてに求められるヌシの命。どこまでもギンコが思うギンコの命とは正反対のもの。その命と力を羨み、それを自分の力にしたいと思ってしまったギンコ。もちろん、そんな考えは馬鹿なものだと慌てて卵をもとの巣に戻そうとしますが、誤って落として卵を割ってしまいます。

 

命の光が小さくなりつつあるヌシの卵。慌ててその卵を救おうとするギンコが滑り落ちたのは、「光の川」の前。今まで何度となく『蟲師』の物語のなかで出てきた命の源が流れる川。

 

そこで前のヌシが光の川に入っていくのを見つけ、自分の命と引き換えにしていいから、新しいヌシを助けてくれと懇願するギンコ。

 

しかし前のヌシはそのまま命の源へと帰ってしまいます。そして落胆するギンコの前に現れたのは「光の輪」。命の「理」。

 

「理」はギンコの前に、人の手の形をとって、卵を受け取ります。そして、ギンコを川とは反対の方向へといざない、消えていきます。

 

「理」が光の川へと戻ることを良しとせず、元いた場所へとギンコを戻したことに、「生きろ」と認められたことを知るギンコ。その瞬間、少年は元の山の中へと戻っていました。

 

 

その後、ギンコを見つけたスグロにすべてを包み隠さず話したところ、「理」がヌシの命を受け取ったのなら、いつか山にはヌシがまた現れるだろうと話すスグロ。しかし、しばらくの間は山は閉じなければならないだろうと。光脈筋の山の「理」を乱したギンコを、山の蟲師であるスグロは「許すわけにはいかない」として里から出ていくように言います。

蟲師の薬の入っているであろう木箱を授け、蟲タバコを持たせて旅装束にさせて。そして、「お前のいてはいけない場所などない」と諭すスグロ。出ていくようにと言いながらも、ギンコの居場所はこの世界のすべてにあるのだと言います。

 

里の人間からギンコを守るために、「許すわけにはいかない」と出ていくように言うスグロ。そんなスグロの里の蟲師としての役目と暖かさが同居した対応だなと思いました。

 

最後、草の原のなかで腰を下ろして休むギンコ。その瞳に映る蟲たちがとても美しくて、「それぞれがあるようにあるだけ」だということをギンコが思い至る場面で物語は終わります。

 

ギンコが自分の存在を認め、蟲師ギンコとしてすべてを受け止めていくあり方へと変わっていくきっかけが描かれた物語でした。

 

 

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