漆原友紀『蟲師』6 ③

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「夜を撫でる手」

今回は、初めて読んだとき、ちょっとびびったです。冒頭、ギンコが夜の山で出逢った不可思議事。人間がギンコに指示すれば、指一本動かせなくなったその描写にびっくり。なんかそんな人間離れした超能力みたいなん、まさか蟲師で描かれるとは思わなかったからでしょうね。

 

でもそこはそれ、蟲師なので。もちろん、蟲の仕業です!!笑

 

明朝、里に降りて肉を求めたギンコは、そこで夜の山で出逢った人間を見つけます。彼は病弱な弟と二人で暮す猟師、辰。腕が良いのか、たくさんの獲物を捕っているのですが、それらは全て腐ったような臭い匂いがしてとてもじゃないが食べられたものじゃない。ならば、今から獲りにいってやる、という辰の後をギンコが追ってみると、なんと素手で捕まえている!!

 

どうやら、ギンコに夜にしたように、獣の身体の自由を奪ってそこを特別な力で殺すらしい。それが「腐酒」という蟲のなりそこないを摂取したせいだ、というギンコ。それは一族の血に連綿と受け継がれるものらしく、彼らの父親もそうであった様子。しかし、辰のように「腐酒」の毒性に耐え、その力を使うことのできる者もあれば、弟のように、毒性ゆえに身体が弱く死に至るケースも多いそう。

 

治すためには、光酒を一定量飲むだけでいいということで、ギンコは光酒を入手してきて戻ることを約束します。

 

辰に夜の狩りは提灯だけでも持ってくれ、というギンコ。辰は力のおかげで夜目も利くし、自分を狙う獣もいないから、大型の獣を狩るには夜、光を持たずにいる方が都合がいいと返します。それに対するギンコの忠告が、まるで人間そのものに対する忠告のようでぞくっとしました。

 

「お前は山の王にでもなったつもりか。お前も山の一部にすぎんだろ。何で命を落とすかなど誰にも知れんよ。例えそれが山で最も恐れられるけものだとしてもな」

 

ギンコってたぶん、人間も山の一部だから、獣の一種なのだろうと考えているんでしょうね。今、山の王となっている人間へ、遅すぎる警告のようにも感じました。

 

しかし腐酒とは怖い。それに浸食されると、どうやら無駄な殺生を好むようになるらしく、彼らの父親も今の辰のように、無駄な狩りをしていた様子。そして蟲の側にどんどの近づき、人間としての存在が揺らいでいき、最終的に消えて無くなったと。それから、力は辰に集中していき、辰が今のように殺生を好むようになってきたと。

 

しかし、弟の呼びかけに答え、弟のために、と考える辰は冷静な、弟思いの兄としての側面をまだまだ残していた様子。

 

ギンコが光酒をもってきたとき、彼が弟の呼びかけで「元の俺に戻ってやらなくちゃ」というのが、彼の明暗を分けたんでしょうね。

 

しかし蟲のせいとはいえ、殺生の代償に右手をなくした辰。光酒のおかげで、兄弟とも、これからは平穏に暮らせそうです。辰は右手をなくしたけれど、兄弟もギンコも笑顔でよかった。

 

辰はしかし、やはり夜の王だったのでしょう。闇を恐れずに山を徘徊していた姿は、その人間の傲慢さを結晶させたような気味悪さがありましたね。昼間でも山は静か。ギンコもそうだけど、よく夜の山を一人で歩けるもんです。ちょーこわいよ。

 

そしてここだけの話。辰は蟲師史上、一番の男前だと信じて疑わない私。笑

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