よりぬき水爆さん / 道満晴明

よりぬき水爆さん

快楽天が産んだ二人の異才のうちの一人、道満晴明の初期短編集です。作者が快楽天やその他のアダルト雑誌で発表した短編がたくさん集められています。総ページ数、何と356ページ!

最近は一般紙にも活動の場を広げている作者ですが、それでもまだ知る人ぞ知るといった感じですね。作風がどこかマイナー風味なのが一番の理由でしょうか。それともどの作品もページ数が少ないから?

しかし、なかなかいないタイプの個性的な漫画家です。漫画界の星新一! と個人的には呼びたいところです。

この短編集に収録されている作品は大体が1話が8~16ページ。しかしの短いページ数の中には必ず、短編映画のような寓話のような不思議な作者独特のセンスが光っていて、切ないような幸せなような、心に残るオチがつくのです。

この短編集で私が一番気に入っているのは、『ハキダメエレジー』ですね。

舞台は少し未来の日本とでもとらえればいいのでしょうか。メイドロボが自分を拾ってくれたご主人様・・・もとい「親分さん」と都会の片隅で身を寄せ合って暮らす話です。

「親分さん」と自分を呼ばせている大柄な男はその体に似合わず小心者の落ちこぼれヤクザ。メイドロボはロリ体型でちょっと抜けていて、家事は何とかこなすもののしょっちゅうオイル漏れは起こすわ記憶は途切れるわ…はっきり言ってしまうとスクラップ目前の旧型です。

そんな吹けば飛ぶような存在でしかない二人が、不思議なバランスで一緒に暮らしているある日のこと。「親分さん」に、本物の親分から鉄砲玉の指令が下ります。そんなこととは知らず、いつものようにうちで掃除をして「親分さん」の帰りを待つメイドロボ…。

自然と悪い予感が読者の胸を騒がせます。

自分の生活もままならないのにお荷物同然のスクラップを拾ってしまったヘタレヤクザと、そんな男を一途に慕うスクラップ…。

せめて、悲しい終わり方はしてほしくない…。そう祈りながら読みました。

 

メジャー志向のわかりやすさにちょっと疲れた人にオススメしたい一冊です。

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