漆原友紀『蟲師』一 ④

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「枕小路」

まくらのこうじ。

こちらのお話は少し、苦手なお話。蟲師のなかでもダントツでやりきれない物語のひとつなのではないでしょうか。

 

予知夢を見る、という男の噂を聞いて男の元を訪れるギンコ。どうやら、それは蟲の仕業の様子。薬を渡し、定期的に飲むよう言い置いて、「良い夢を」と去って行きます。

 

男は最初、疑っていたものの、増えていく予知夢に恐れ、飲む回数を増やしていきます。そんななか、村を襲った津波により娘を亡くし、「薬を飲んだせいで予知夢が見れなかった」と判断して、再び薬を飲むことをやめてしまいます。

 

そしてそんなある日、見た悪夢が現実に起こって、男は悟りました。

 

それが、「予知夢」なのではなくて、夢に見たことを現実に起こすような性格のものなのだと。

 

ギンコが再び男を訪ねたときには、家族も亡くし、村人も全ていなくなってしまった里に独りいる男。

 

「夢野間」という蟲は寄生されたが最後、生涯共生していかなくてはならない蟲。だからこそ、嘘を言ったんですね、ギンコ。

 

でも事実を知ってしまった男はもう……。薬を飲んで自殺を図ります。

男を介抱したギンコの言葉が印象的ですね。

 

「お前に罪などないさ。蟲にも罪などない。互いにただその生を遂行していただけだ。誰にも罪などないんだ」

 

恐れや怒りに眼をくらまされるな――ということでしょうね。

 

でも男はそうもいきません。夢野間が枕を通して現世にやってくることをつきつめて、その枕を斬ってしまいます。でも。

 

枕と一緒に、自分の身までも斬られてしまう。

 

ギンコの助けにより一命を取り留めた男。その後、枕を断ち、夢をみることはなかったそうですが……。

 

ギンコが少し後に訪れたとき、男は精神を病み、ついには刃を己に突き刺して自殺を図った後でした。

 

蟲に犯されることはなくなった後でも、彼は自分の「罪」にさいなまれ続けたのでしょうね。

「あるようにあるだけ」ということが、これほど悲しい現実を呼び寄せるのに。それでも、ギンコは蟲を愛でる。

 

そんな姿勢には、どこか現実の世界で起こっている様々な出来事に対してもあてはまるんじゃないかと思い、とても考えさせられるものだと思います。

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