ワレワレハ / かわかみじゅんこ

ワレワレハ

表紙の少女、表題作の主人公の奈真里のまっすぐな瞳が印象的ですね。この表紙に心を射抜かれた思いで買ってしまった人もいるのではないでしょうか。ご安心ください、中身もまさにこの表紙絵通りの漫画です。みずみずしくて鋭い、作者の独特のセンスが痛いほどに光っています。

万と奈真里は同じ団地の同じ棟で育ってきた幼なじみ。しかし中学入学と同時に奈真里が大変身。メガネを取って歯の矯正をして、周りの注目を浴びる美人に生まれ変わった――というところから物語は始まります。

奈真里はずっと、初めて会った時から万が好きでした。そして中学に上がるタイミングで、その恋心を行動で示していくのです。しかしそれは肝心の万に届いているのかいないのか、それを読み取れるような描写はあまりないまま、話は進みます。ふたりはさらに成長して、高校3年生までが描かれます。果たしてその間にふたりの仲は進展するのか…。

TLものらしい、恋する女の子のモノローグ中心で進むこの作品、しかし恋愛の成就を目的として描かれたわけではないような気がします。ただ、主人公の奈真里が恋をする。そして意中の幼なじみに好かれようと自分を磨く。そのものすごいパワーというか、それこそこの表紙から受けるまっすぐな何か。その10代特有のどこか危なっかしい美しさみたいなものがテーマなのではないかなと。この作者さんは10代の少女たち(たまに少年たち)を、客観的な視点からひとつの愛すべき存在として描くことがおおいですね。

物語の終盤でようやく、奈真里はすべてが自分の独り相撲だったことに気づきます。歯の矯正もコンタクトも、万には全く響いていないということに。他の誰に綺麗だと誉められても、万たった一人に認められなければ無意味であると。でも、諦められない。それが恋だと。

どうしてそこまで思い込めるのか――そう訊かれた奈真里の返事。

「恋と思い込みって、どうちがうの?」

この台詞は私の胸に刺さりました。

何てクールな恋愛観なのか。これが高校生の、しかも恋愛中の少女の台詞だなんて。

確かに実際、恋愛なんてただの思い込みでしかない。相手の全てなんてわからないし、思うように行動するしかない。だから自分は恋をするのだ。

ラブラブエッチなんて予定調和ではない。しかし何も知らない少女たちだからこその達観にも似た強い意志がそこにはあります。だから私はかわかみじゅんこが好きです。

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