穂積『さよならソルシエ』一 ①

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穂積さんの中編マンガ、『さよならソルシエ』。昨年の「このマンガがすごい」に第一位として選ばれたこの作品!

誰もが知る炎の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。今でこそ有名ですが、彼が生前ほとんど無名であったこと、自分の耳をそいだり、晩年は精神病院に入院していたこと、決して長くはないその人生のなかで大量の絵画を遺したこと……こうした彼にまつわる逸話は知る人が多いはず。彼を「炎の画家」たらしめた数々の逸話を、穂積さんは彼女なりの解釈でマンガにしています。

 

こんなゴッホと弟のテオの関係があってもよかった。

私はゴッホがとても好きなのですが、決して他人から見ても幸福とは言えず、孤独と思ってしまう人生が、穂積さんのマンガでは活き活きと何の屈託もなく幸福に描かれています。そこが好き。なんだか救われるような思いで読みました。

 

物語はフィンセント・ファン・ゴッホの弟のテオドルス・ファン・ゴッホを中心に回ります。(そういえばどっちもゴッホですよね……)

 

第1話「パリの魔法使い」

 

1885年のフランス。浮浪者相手にチェスの指南をするテオ。シェルジュという男性が浮浪者相手に金を賭けて勝ちまくっていたのを、負けていた浮浪者に勝ち方を教えたようです。浮浪者を馬鹿にしているような風体でありながら、「品格」あるグーピル商会、自身が支店長を務める画廊すらも馬鹿にしているような口調です。

 

飄々としていながら、本部長のお怒りをあしらう様子からは、その内に秘めたる熱い何かを感じます。ちょっと怖い。

 

なんやかんやしてたら、シェルジュという男が画廊にやってきます。どうやらこいつは浮浪者のふりをした、高名な美術評論家であったそうです。金持ちなのに、浮浪者相手に賭けチェスを挑み、金を巻き上げ、跪かせる「高尚な趣味」をお持ちの駄目なおっちゃんです。

 

そんな男の評論を駄文とこけおろし、「特権階級に媚びへつらい金のための礼賛記事で芸術を停滞させる。あなたはパリ画壇の犬だ。この世界にはもっと鮮やかな新しい才能と芸術が存在する」と言ってのけるテオもすごい、、、、

 

自身の名を不敵に笑いながら語る顔が怖い怖い。。。この人、お腹まっくろちゃうか、、と思わせる第一話。

 

第2話「夜の住人たち」

この物語の簡単な構図が描かれた回でした。

ボヘミアンの集い場である一件の酒場で、主要な登場人物が会します。そこで飲み食いする日の目を見ない若い画家。たまに出入りする売れる絵を金持に売る画商、テオ。そして、フィンセント!

ちなみにフィンセントは最後の最後しか出てきません笑

 

ここで、日の目を見ない若い画家たちが、日々議論し、その芸術的精神を高め合う場。そこにいる若い画家が、テオにケンカを売ります。権威の犬は出て行けと。しかし、テオはもう怖い怖い。不敵に余裕に、「騒いでいるだけで高められるとはなんとも都合のいい精神」とそのケンカを売ります。

 

次の日、道端にて高名な画家の小さい絵と、パン屋の描いたパンを1フランで並べて売ります。

すると、なぜか何の技術もない無名のパン屋の絵が売れたではありませんか!笑

テオ曰く、人びとの心を動かすのは、素晴らしいと感じたそのままの感情を描いたものだと。

酒場に集う、日の目を見ない若い画家たちのように、描く対象のものに感情を動かされて描いた絵は、時代を経ても人の心を掴んでしまうものだと。しかし、現在のアカデミックなパリの芸術界はそのような芸術性は必要ないとして捨て去られてしまっている。

 

テオは芸術は酒場の若者にあり、と考える方の人間。しかし、実際は仕事としてアカデミックな金持のための芸術を売ることを生業としている人間。

彼の心は「体制は内側から壊す方が面白い」。

 

そして体制の破壊に若者―アンリを誘います。

 

ここから、何か動くのかな、と思っていたところにフィンセント登場!

 

よろよろっとしたボサボサ頭の男。まるで浮浪者のような男がフィンセントですと!!!

 

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